時代ごとに、とらわれたように、特定の問題や現象の周辺を取材して駆け回ってきた。入社した当時は開発と公害、減反の時代だったと思う。今は、地方の疲弊と少子化や高齢化の問題が頭を離れない。その周りでヒグマ、大地震や津波、火山がうごめいている―そんな時代。
1980~90年代は「大学誘致」だった。石狩南部の勤務地で、毎日のように聞き、話し、記事化した言葉。若年人口の都市への流出は地方振興の大敵だ。その解決策の一つが18歳人口の流出をくい止める高等教育施設の整備。もし地域の将来像と合致する大学の誘致や開学に成功すれば、若者を迎え入れることができる。行政も議会も大学を探し求めた。
1カ月ほど前の新聞に「大学の統合・再編促進」の大きな見出し。文科大臣が少子化を踏まえ大学の統合や再編を促すための指針づくりを諮問したとのこと。誘致合戦の記憶に浸っていた自分の古さにあきれる。現実は速い。石狩管内当別町の北海道医療大学が2028年4月の北広島市への移転を発表した。約3600人の学生、800人の教職員が消える当別町の経済損失は20億円以上―。地元の不満や不安の声が報道されている。
大学が丸ごと移転する時代。報道を読み返しながら次の時代を想像する。(水)