インボイス制度開始 各所で対応追われる 「メリットない」不安多く

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  • 2023年10月2日
ステッカーで「インボイスOK」をPRするタクシー事業者

  消費税のインボイス(適格請求書)制度が1日に始まった。正確な適用税率や消費税額などを、売り手が買い手に対して伝える請求書で、苫小牧市内でも各事業者や関係団体などが対応に追われてきた。これまで消費税を納めなくてよかった免税事業者が、不利益を被らないよう課税事業者に移行した例がある一方、印鑑店では思わぬ特需が生まれた。制度開始後も不安を覚える事業者は多いとみられ、経済団体などは丁寧に支援する構えだ。(報道部・高野玲央奈)

  課税事業者に移行決断

  年間売上高が1000万円以下の事業者は、これまで納税義務がない免税事業者だが、10月以降は取引先にインボイスを発行できないことが悩みの種だった。免税業者のままでいるか、課税業者に転換するかは任意だが、税額控除の対象にならなければ、取引を敬遠される可能性がある。

   苫小牧個人タクシー協同組合(日新町)は、全会員12事業者が免税事業者だったが、インボイス制度に対応するため、それぞれ課税事業者として登録することを決断。同組合の玉村義行理事長(70)は「お客さんに(免税事業者であることで)迷惑はかけられない」と力を込める。

   「インボイスOK」と書かれたステッカーを車体に貼り、仕事で使ってもらえるようアピールするが、燃料費の高騰で出費がかさむ中、「さらに税を取られることは痛い。正直、制度はわれわれにとってメリットはない」と肩を落とす。個人でタクシーを運行している三嶋克雄さん(72)も「手取りが減ってしまう」と懸念する。

  印鑑店では特需     

  一方、インボイスでは登録番号13桁の記載が必要になる。印鑑店の弘文堂(王子町)は7月ごろから、苫小牧市や近郊の事業者を中心にはんこの注文が入り、これまで予約を1000本ほど受けている。9月は特に駆け込みが増えたといい、1日当たり20件ほどの注文が殺到し、秋山集一社長(73)は「本来ならば、仕事が少ない時期。思わぬ特需で、ありがたい」と喜ぶ。

   制度への理解はある程度は深まっていると思われるが、苫小牧商工会議所には8月ごろから、事業者からの実務相談が増え始めたという。9月は週2回個別相談会を開いたが、1カ月で20件以上の相談が寄せられた。制度開始以降も経理処理の面など、いろいろな疑問の発生を想定しており、地域振興課の中村航課長(42)は「問い合わせの状況に応じて、相談体制の強化を含め、柔軟に対応していきたい」と話している。

   ◇インボイス

  税率ごとに区分した税額など新たな情報を加えた適格請求書。税務署に登録した課税事業者のみ交付できる。事業者は売り上げ時に受け取る消費税から、仕入れ時に支払った税額を差し引いて納税しているが、10月からは仕入れ分の税額控除を受けるため、仕入れ先からインボイスを受け取る必要がある。

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