江別市在住の作家、手島圭三郎さんはこれまでにシマフクロウやキタキツネ、ヒグマなど本道にすむ動物の生態に材を取る物語の絵本を多数著してきた。描線が力強い木版画で描く「おおはくちょうのそら」(1983年初版)も傑作の一つ。ハクチョウ親子6羽の中に病気で空を飛べなくなった子が1羽いて、北の故郷へ帰る時期を遅らせている父鳥はついに旅立ちを決める。そこからストーリーが動きだし、渡り鳥の懸命なありさまの描写を交えて幻想的に結ばれていく―。
昨年の春に記者はあるハクチョウを目にした。日課で近所の海岸線を散歩していたら、餌がないはずの渚ではまず見掛けない、白く大きな2羽がいた。遠い高緯度の目的地への北帰行途中のつがいらしい。1羽の羽には不自然に折れ曲がった箇所があり、けがしているように見受けた。翌日、次の日、その翌日も2羽は寄り添っていた。素人目で「異変」を感じ、鳥類の識者に聴くと「見守っているべきだ」と忠告された。数日後、浜に強い南風が吹いた日に2羽の姿はなかった。「旅」の幸運をただ祈るだけだった。
ウトナイ湖野生鳥獣保護センターによると、南下オオハクチョウの湖初飛来日は過去5年、今月初旬から中旬という。野生の大移動とまた出合う季節だ。(谷)