2018年9月に発生した胆振東部地震から5年の節目を迎えたむかわ町は9月30日、町内道の駅「四季の館」で震災の記憶をつなぐ防災講演会を開いた。東日本大震災の教訓を後世に伝える活動を展開する岩手県・大船渡津波伝承会の斉藤賢治会長(75)と、同県釜石市の復興に携わってきた建設技術研究所(東京)の伊藤義之氏(56)を講師に迎え、来場した町民ら73人(町発表)が災害に強いまちづくりについて考えた。
大船渡市で震災を受けた斉藤会長は、高台へ逃げた直後、とっさに収めた津波襲来の様子を動画で見せながら、「亡くなった人の中には『過去に津波が来たことがないから』と逃げなかった人もいた。逃げていたら助かった命もあった」と回想。世界で発生する震度6以上の地震の10%が日本で起きていることに言及し、「ハザードマップは単なる目安。想定を上回ることもある」と注意を喚起。「まさかに備えて施設を整え、心を整えておくこと。地震が来たら、真っ先に逃げて」と強く訴え、▽地震が起きたら津波が来る▽戻ってはいけない―などと呼び掛けた。
発災後に現地へ駆け付けた伊藤氏は、東日本大震災の教訓から「最低限、想定(心の準備)をしないと心と体は動かない」「被害をゼロにすることはできない」「(行動は)最悪の事態に基づいている必要がある」と説明。自ら避難行動に移って助かった釜石市の子どもたちを例に挙げ、「想定を信じないで、(折々の)状況下で最善を尽くした。適切な避難を実施すれば、人的被害をゼロにすることも可能になる」と伝えた。
また町が策定を進める事前復興計画に当たって「まちの将来を考えることにつながる」と語り、「やるか分からないことをどうしようと考えるより、まちの未来を考えようと呼び掛けた方がいい」「釜石市もそうだが、青年部など町の若い人が元気なところは復興が早い。若者にハンドルを握ってもらい、優しい目で見守る先輩たちがいる形を取るといいのでは」などとアドバイスを送った。
同講演会にはオンライン視聴を含めた73人が参加。冒頭であいさつした竹中喜之町長は「『守る』と『創る』で両輪にし、防災先導のまちづくりを進めていく。過去の災禍として風化させず、先につなげる機会になれば」と期待した。