第1部 5 自然豊かな製油所へ 環境の大切さ子どもたちに伝える

自然の宝庫を地域の子どもたちに伝える出光生きもの調査隊
自然の宝庫を地域の子どもたちに伝える出光生きもの調査隊
製油所の自然をモニタリング調査
製油所の自然をモニタリング調査

  北海道製油所には石油製品の安全・安定供給と共に重要なミッションがある。自然との融和。創業者出光佐三が目指した工場緑化の思いを託され、建設当初から「北の大地の公園工場」化を進めたが、潮風など悪条件との戦いは難航を極めた。初代所長・森久氏は、出光初の製油所である徳山製油所(山口県)の緑化にも携わったが、本紙(1973年9月)に「専門の造園業ですら本気になってくれない」と吐露した。

   築山造成や塩害防止フェンスの設置など、工夫を凝らしながらシラカバ、ナナカマド、クロマツなど約1万2000本を植えた。2012年から道製油所の自然をモニタリング調査する環境コンサルティング業、地域環境計画(東京)の岡田美佳北海道支社長は「園芸樹木ではなく、風土に合った木を植え、維持されているのが特徴。木の高さは気持ち低い程度で、厳しい生育環境にもかかわらず、調査のたびに成長している」と目を見張る。

   10年に公益財団法人都市緑化機構(東京)の認定制度「社会・環境貢献緑地評価システム(シージェス)」を初取得。14年に「緑化優良工場等経済産業大臣賞」、22年に同機構の「みどりの社会貢献賞」を受賞した。創業当初に植えたヤエザクラは年々美しさを増し、毎春の一般公開を市民らが心待ちにしている。

   同所の豊かな自然を生かし、環境の大切さなどを地域の子どもたちに伝えようと、12年から「出光生きもの調査隊」と題したイベントを展開。鳥類、草木、昆虫などテーマ別にほぼ毎年実施してきた。操業開始から50周年の節目を迎えた今年、地域環境計画の提案で開催テーマに「貝」を盛り込んだ。海辺の貝殻拾いや同所運動公園内に生息する陸の貝カタツムリの観察を実施。市内の親子40人が参加し、同所総務課の松島智子さん(52)は「製油所の自然をより知ってもらうきっかけになった」と喜ぶ。

   大気、水質、土壌など汚染防止に関する環境対策も緑化事業の推進を後押しする。各法に基づく化学物質の排出抑制はもちろん、市と道の3者間で結ぶ公害防止協定で厳しい基準値を順守する。環境対策を取り巻く法律は年々高度化する中、安全環境室の境洋さん(52)は「各種法改正など抜けのないよう、所員への啓発など適時対応している」と話す。

   同所は野鳥が100種類以上観察され、キタキツネなどがすみつくなど動植物のオアシスになっている。シージェスは初回取得のステージ2から、19年には最上位のスパラティブステージに到達。25年にも3度目の更新を受けると「緑の殿堂」入りが決まる。進化を続ける「北の公園工場」から今後も目が離せない。

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