長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日の市議会本会議で、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた「文献調査」について、受け入れない意向を表明した。市長は「市民の合意形成が十分でないと判断している。観光業、水産業などへの風評被害が少なからず発生すると考えられる」と述べた。
対馬市議会は先に、調査受け入れを求める地元建設業界の請願を賛成多数で採択。一方、基幹産業の水産業を中心に懸念も根強く、市長は本会議後の記者会見で、「これ以上、市民の分断を深めたくない」と強調した。
文献調査は、処分場選定の第1段階に当たるもので、論文やデータに基づき活断層などを確認する。受け入れると国から最大20億円の交付金が出る。全国では後志管内寿都町と神恵内村で調査が進められており、対馬市の判断が注目されていた。
比田勝市長は記者会見で、文献調査を受け入れ、最終的に処分場に選定された場合、「放射能(放射性物質)流出の想定も排除できず、将来的に市民に影響、危険性がある」と指摘した上、「安心、安全な事業であるかを熟慮した」と語った。「自治体の長として、文献調査を受け入れた以上、次の段階(ボーリング調査)に進まないという考えには至らなかった」とも述べ、苦しい胸中を明かした。
また、任期満了に伴う市長選(来年2月25日告示、同3月3日投開票)に3選を目指して立候補する意向も表明。交付金に頼らない地域振興について「非常に難しい問題だ」としながら、企業誘致の強化などに取り組む考えを示した。
対馬市では2007年、市議会で最終処分場誘致への反対を決議した経緯がある。長崎県の大石賢吾知事は27日、「対馬市の判断を尊重したい」とのコメントを出した。