札幌市の円山動物園で8月に生まれたアジアゾウ・パールの子(雌)が人気を集め、来園者が増えているそうだ。テレビで見ても、しわくちゃの優しい目と小さな体で、大木のような太いパールの脚に絡まるように歩き回り、乳を求める姿が頬ずりをしたくなるほどかわいい。
弱い動物の子は「この生命を守らなければ」と周囲に思わせるために、表情やしぐさをかわいらしくした―と何かで読んだ。幼児期をはるかに過ぎてもかわいいパンダは別格として、確かに猫も犬も親たちとは違うかわいらしさで人間に迫ってくる。人間の赤ん坊は「指握り」という技だって持っている。酔って帰った父親が、半握りの手のひらに人差し指を当てると、細く柔らかい指でギューッと握り締めて、深酒を注意してくれる。
苫小牧市の2022年の児童虐待件数は前年を下回ったものの190件に上ったと先日の本紙記事。被害児は未就学児が全体の半数を占め加害者は約6割が実母、2割が実父とか。つらい記事だ。
わが家は男児を2人育てた。母さんと口げんかをして負けた。サッカーで勝てなかった―。子どもたちのいろいろな泣き顔を見ながら親も成長し、そして老いた。親になぐられて、痛みや屈辱にゆがんだ子どもの顔だけは見ていない。(水)