エネルギーの安全・安定操業を通して、北海道の経済や産業の発展に貢献してきた北海道製油所。その象徴的な取り組みとなっているのが、4年に1度の大規模保全工事。高圧ガス保安法、石油コンビナート等災害防止法など各法に基づいた定期補修工事、シャットダウンメンテナンス(SDM)だ。石油精製の全装置を停止し、隅々まで点検、検査、補修、更新する大がかりな作業となっている。
中でも通称「メジャーSDM」は毎回、全国各地から作業員が延べ10万人以上参加する。仮設足場の設置をはじめ、プラント配管の点検、回転機、計器類の検査など約20種にわたって専門業者が関わる。製油所では2年ほど前から、作業工程の作成や受け入れ体制の準備を進めており、SDMの実施計画などを手掛ける機械課の舟山拡志さん(36)は「構内装置はエネルギー安定供給のため24時間、年中無休で稼働している。SDMはトラブルを未然に防ぐ重要な役割を担っている」と強調する。
期間中は構内に作業員が常駐するプレハブが並び、売店が店開きするなど活気にあふれ、地域の経済にも多大な波及効果。作業員は主に苫小牧市内のホテルや旅館に宿泊し、周辺の飲食店やスーパーなどににぎわいをもたらす。苫小牧ホテル旅館組合の佐藤聰組合長=ホテル杉田(表町)代表=は「地域の宿泊業界は毎回大きな恩恵を受けている。とてもありがたい」と感謝する。
市内勇払のスーパー「ホーユーサービスセンター」も期間中、一日の業務を終えた作業員が足を運び、食料品などを購入する姿が広がる。仕出し弁当の注文も増えるといい、同店を経営する豊勇の忠鉢高志代表は「一度使っていただいた業者さんが、SDMのたびに継続して頼んでくださることも多い」と目を細める。
新型コロナウイルス禍の2020年は困難を極めた。苫小牧市が感染拡大防止の観点から規模縮小を求め、製油所もこれに応じて工夫を重ねた。市民の不安を解消しようと、法定点検などに絞って工事を約25%縮小し、工期も例年より1カ月延長して作業量を平準化。道外から参加する作業員を半減させて「密」を防いだ。構内入り口にサーモグラフィーカメラを置き、宿泊施設内で食事を完結させるなど対策を徹底した。
計36社、延べ12万6000人が未曽有の情勢下で的確に作業し、無事故、無災害はもちろん感染者ゼロで、エネルギーの安全・安定供給をつないだ。舟山さんは「出光として初のコロナ禍メジャーSDM。手探りだったが、無事に終えて、ほっとした」と回顧。再びメジャーSDMを迎える来年に向けて「働き方改革による長時間労働抑制や休日の設定など、また新たなSDMのあり方が求められている。協力事業者と一体となって、計画づくりをしたい」と気持ちを新たにする。地域になくてはならない製油所として歩み続ける。