岸田文雄首相は25日、10月中の取りまとめを目指す新たな経済対策の五つの柱を表明した。最優先課題として、国民生活を圧迫している物価高への対応と企業の賃上げ・設備投資の促進を挙げた上で「日本経済が新たなステージに入るためにあらゆる手法を動員する」と強調した。コロナ禍から回復途上にある経済を活性化させる姿勢を鮮明にした。
首相は首相官邸で記者団の取材に応じ、経済対策について(1)物価高から国民生活を守る(2)持続的賃上げ・所得向上と地方の成長(3)成長力につながる国内投資促進(4)人口減少を乗り越え変化を力にする社会変革(5)国土強靱(きょうじん)化など国民の安心・安全―の5本柱にすると語った。
首相は、今回の経済対策の目的に関し「経済成長の成果である税収等の適切な還元」と「過去30年の経済停滞を招いたコストカット型経済からの転換」だと説明。物価高に負けない「構造的な賃上げ」と「人への投資」を重視し、優遇税制や補助金給付に取り組む考えを示した。社会保障負担の軽減策として、「年収の壁」解消策を週内に正式決定する方針も打ち出した。
首相は表明に先立ち、自民・公明両党の政調会長と官邸で会談し、経済対策を検討するよう要請した。26日に閣僚にも指示を出し、来月中をめどに対策を取りまとめた後、財源の裏付けとなる2023年度補正予算案の編成に「速やかに入りたい」と明言した。予算規模が膨らめば、財政健全化が一段と遠のきそうだ。
物価高対応では、年末まで延長が決まっている電気・ガス代の負担軽減策や、ガソリン価格高騰を抑制する補助金制度を年明け以降も続けるかどうか検討する。政権発足以降の最低水準で推移する内閣支持率の挽回を図るため、低所得者対策も取り沙汰されている。
賃上げと投資拡大策には、生産性向上に力を入れる企業への補助金と労働者のリスキリング(学び直し)支援が含まれる。今年度末に期限が切れる中小企業向けの優遇税制「賃上げ促進税制」の延長や、半導体など重要物資の国内生産拡大を後押しする税制の創設も視野に入れる。
人口減少対策となる社会変革では、行政効率化を目指す「デジタル行財政改革」を推進。国民の安心・安全の確保に関しては、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出対策などを実施する。