アイヌ民族文化財団(札幌市)は20日、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の敷地内で、人権啓発イベント「じんけん×ウポポイ2023」を開いた。町社台在住で人権擁護委員の田村直美さん(52)がアイヌ民族の歴史などについて講演し、約60人が熱心に耳を傾けた。
札幌法務局、札幌人権擁護委員連合会が共催。パネル展や、人権イメージキャラクターの「人KENまもる君、あゆみちゃん」とウポポイPRキャラクター「トゥレッポん」による人権クイズを行った。
講演はポロト湖畔のチキサニ広場で開き、田村さんは「語り継ぐ~今を生きるアイヌとして」の演題で午前と午後の2回、マイクを握った。アイヌ民族は明治政府の同化政策で本来の氏名や言語、暮らしの風習などを奪われてきた歴史を語り、先住民族として生きる誇りや多文化共生社会の実現に向けた自身の取り組みなどを紹介。「歴史の事実を知ることで差別や偏見は少なくなる」と訴え、「個の自分、素の自分を自ら受け入れ、互いに手を取り合うことが大切」と人権尊重の輪を広げる重要性を訴えた。
講演を聞いたウポポイ運営本部の村木美幸本部長(63)は「人権を考える機会は、時間をかけて継続して行う必要がある」との考えを示した。
ウポポイは、差別のない多様で豊かな文化を持つ社会を築いていく象徴として位置づけられており、同財団は同法務局などと連携し、同イベントを開業年の20年から毎秋開催している。