デジタルと聞くと思わず尻込みをしてしまう。昭和に生まれ、電話はダイヤルを回し、文章を書くのは紙とペン。写真を撮るのも一枚、一枚カメラのフィルムを巻いてシャッターを押す。そんなアナログを駆使して育ってきた世代にデジタル社会は戸惑いの連続だ。
そもそも「デジタル」とは。辞書をひもとくと、ラテン語の「指」が語源だ。情報や存在する物をすべてコンピュータで扱えるように数字で表現したという意味。その機器の代表例がスマートフォン。小さなパソコンと言えるほど何でもできてしまう。コミュニケーションの手段としても欠かせない道具になっている。
それでもシニア世代にデジタルはややハードルが高いと思う人も多い。そんな気持ちを払拭(ふっしょく)してくれるのが、「しあわせデジタル生活」(中央公論新書)の著者の若宮正子さんだ。若宮さんは58歳からパソコンを覚え、81歳でプログラミングに挑戦したつわもの。
年を重ねると失うものが多くなるが、デジタルは「暮らしの不便さを補い、知らなかった世界の扉を目の前に開いてくれる」と指摘する。デジタルとシニアは相性がいいそうだ。学ぶことの楽しさも教えてくれる。何歳であっても一歩を踏みだす素材。なるほどと思う。(昭)