教え

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2023年9月15日

  大きな自然災害が多い日本。被害を受けたまちには、大切な人を突然亡くした人が多い。悲しみに暮れてもあすを迎えるのは、生きていれば、自分の中の大切な人も生き続けるからだろうか。

   あの時に怒った、笑顔になった、悲しい目をした…。自分だけが知っている大切な人が、自分の中にいる。だから急にいなくなっても、月日がたっても、思い出して話ができる。それが自分にしかできないことなら、たとえ被災ですべて失っていても、生きていく意味はある。そう思う日があったのかもしれない。

   胆振東部地震から5年目の6日。本紙は、最愛の妻が避難所で倒れて亡くなった厚真町の80代の男性を掲載した。妻の好きだった花を今も自宅の庭で育てるその人は、被災時を振り返り「あの時のことは思い出したくない。でも、何があっても忘れられない。死ぬまで忘れないよ」と語った。複雑な胸中が伝わってきた。

   思い出されることで、生き続ける人たちがいる。思い出している人もいつかは、思い出される人になる。人の世で続いてきたリレーを、男性の言葉から思い起こした。そして”思い出される自分”を考えた時、今までの生き方を省みる機会をいただいた。一人一人の被災に、さまざまな教えがある。(林)

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