平和

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2023年9月13日

  親の世代の女性から、子育て中につらかったこととして聞かされたのは「子どもに対する夫の暴力」だ。軍隊に召集され、理不尽な暴力を経験して帰郷した元兵士が多かったのだろう。げんこつや平手打ちだけでなく、皮ベルトでなぐる父親もいたようだ。「普段はそういう人じゃないのに。怒ると止まらなくて。覆いかぶさって子どもを守ったり、大変だったね」と、悲しそうに教えてくれた。

   戦争中の軍隊や兵士のゆがみが、家庭だけでなく学校の中にも染み出した時代がある。学級で何か問題が起きると「連帯責任」という言い方で集団体罰を科す先生に出会ったことがあるのは、団塊の世代の人ぐらいまでか。「男子は全員前に出ろ。歯をくいしばれ」と言われて黒板の前に並んで目を閉じ、順番にバチンバチンと頬を平手打ちされたものだ。

   全国の児童相談所が2022年度に相談を受けた児童虐待件数の速報が先週、こども家庭庁から発表された。21万9170件。統計開始から32年連続の増加だという。面前での家族への暴力や暴言など心理的虐待が全体の6割。身体的虐待や育児放棄、性的虐待も多い。21年度に虐待で命を失った子は74人。最も多いのはゼロ歳の26人。平和は、子どもに近づいているのか。遠のいているのか。(水)

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