「オフサイドや!」。スタンド前方に陣取った地元の子どもたちの声で、なぜプレーが止まったのかがようやく分かる。約40年前の近鉄(現東大阪市)花園ラグビー場。当時勤めていた新聞社で高校ラグビーの取材を命じられた。支局のある県予選から始まり全国大会の花園にも行ったが、それまでラグビーの試合を見たことは一度もなかった。入門書を買ってポジションと役割を一から覚え、必死に勉強したものの、監督に戦術の話を聞いてもチンプンカンプン。寡黙な選手たちから言葉を拾うのも一苦労だった。
そにしけんじ氏の漫画「ラガーにゃん」(光文社)の第1弾猫でもわかるラグビー入門〔初級編〕はワールドカップ(W杯)日本大会の2019年に出版された。猫ならではの習性に笑えてかわいい上に、元日本代表キャプテン廣瀬俊朗さんのルールや用語解説が分かりやすい。今回のフランス大会を前にまた取り出し、あの頃これがあったらなあと思った。
当時、ラグビーにW杯はまだなかった。花園とW杯を比べようもないが、チームを背負って全力でぶつかる選手たちに胸が熱くなるのは昔も今も変わらない。初戦のチリに快勝し、18日は強豪イングランドに挑む日本代表。試合開始が午前4時なのも国際大会ならではだ。(吉)