「学校へ行かなくちゃ。でも行きたくない」。雨がっぱに着替えてから玄関でぐずる娘。出勤する父親は、かっぱを引きちぎって「好きにしろ!」。聞こえてきた母の声に救われる。「行かなくていいんだよ」。知人の60年以上も前の経験を聞くたびに思う。「学校って何だ?」
自分は小学生の頃、風邪一つ引かず、学校を休んだことのない子だった。授業参観日翌日の代休の日だって登校した。何年生の時だったか、登校したのに学校は空っぽだった。現れた当直のI先生が何か言ったが「きょうは休みだゾ」とは聞こえなかった。「もしやー」と思い当たるまでにずいぶん時間がかかった。
勤勉に通学した子には、年度末に賞が贈られる制度があった。休みが数日だけの子には「精勤賞」。一日も休まなかった子には「皆勤賞」が贈られた。自分はいつも皆勤賞だったが、休日登校の武勇伝は笑えても、なぜ学ぶのかを考えていない皆勤に、意味はなかったと思う。ほんの数年後には、天気が悪い、風が冷たいーと学校を休む生徒になっていた。
首都圏に住む孫の一人が小学校への登校を拒否しているとの情報。いつか電話ででも、じいちゃんの反省や後悔を話してあげよう。学ぶことや友を持つことの真の大切さを、一緒に考えよう。(水)