サンマは「秋刀魚」と書く。字から素直に姿を連想できる点ではシシャモの「柳葉魚」も思い出す。「秋刀魚」は、昭和の映画監督の巨匠が戦後の庶民の家庭を丁寧に描いた作品名に当てた。作中、当の魚を食べる場面はないが、大衆の食卓を支えた魚の代表なのは確かだ。
先日、サンマの初物を食べた。道東の沖合では大型船の漁も始まっている。だが旬なのに店頭に太った魚はない。細身で小ぶりだったこともあり、状態の良い生でも4匹で400円台と安かった。脂のないサンマは塩焼きだと物足りない。家人は3枚に下ろしてかたくり粉をまぶし、油で炒めて甘辛味のかば焼き風に仕立てた。おいしければ旬の味になる。
NHKが北海道向けの番組でサンマの資源調査に密着取材したものを放送していた。近年、北太平洋に来遊するサンマのルートが東に移り、イワシとの餌の競合で冷水域に追われたり、成長が遅れたり、資源量減少の負の連鎖に入っている可能性など研究者の懸念が示された。
温暖化の一言で片付かない海の変化があるという。4日、定置網漁で初水揚げされた苫小牧沿岸のサケは今年もわずかだった。ここ数年、えりも以西は減少が著しい。サケにはどんな海の変化が影響を及ぼしているのか。気になる。(司)