芸術祭「ルーツ&アーツしらおい―白老文化芸術共創」が白老町の社台から虎杖浜までの12カ所で開かれ、国内外のアーティスト5組の作品展や町ゆかりの作家によるテーマ展などが繰り広げられている。1日の開幕から丸1週間がたち、主催する白老文化観光推進実行委員会の熊谷威二会長は「3日の町民向けツアーには約15人が参加し、好評だった。昨年に比べ町ゆかりの作家の出品も増え、町民の関心が高まっている」と手応えを語っている。
芸術祭は、日本の美や文化を世界に発信する「日本博2・0」の一環で、文化庁や日本芸術振興会、町民有志で作る白老文化観光推進実行委員会が主催する。地域に根差した歴史や文化にちなむ表現を通じ、白老の魅力ある地域資源をアピールし、まちの活性化や観光振興につなげる3年目の取り組み。
10月9日までの期間中、作品展はしらおい創造空間「蔵」(本町)や旧発掘堂(大町)などで開かれ、地元や胆振地方ゆかりの作家の美術作品、手作りの生活民具、アイヌ文様刺しゅうの巨大パッチワークなどを展示する。いずれも観覧無料。
旧白老社台小学校の校舎1階では、今年の本祭を代表する作品を手掛けた町竹浦の画家田湯加那子さん(40)の作品展が開かれている。力強い筆致と大胆な構図が特徴で、人や花を色鉛筆などで描いた約200点の原画が並んでいる。
2階では、ユニット「青木陵子+伊藤存」の映像のインスタレーション「草の根のリズム」を公開中。約30年前に町内を揺るがしたゴルフ場建設問題を参考とした作品で、会場に大小のスクリーン7枚を並べ、社台や竹浦地区で撮影したオオウバユリの花、フキの葉などの映像に、自然や楽器の音、アニメーションを重ねている。
かつてゴルフ場建設に反対する住民運動を起こした町大町の飲食店経営、相吉正亮さん(84)は、7日に妻の京子さん(83)と会場を訪れ「ゴルフ場が建設されなかったことで残った自然が喜んでいるように感じ、温かい気持ちになった」と作品に目を細めた。伊藤さん(51)は「白老の各地域で触れたのは、人の作為や都合に構わず咲き、成長し、躍動する植物たちのオーケストラのようなステージだった」と制作の動機を静かに語った。
芸術祭の関連イベントには、寺院を会場に音を扱った作品展示やワークショップ、アイヌ語地名の地域を巡るフィールドワーク、白老の芸術文化を発信するラジオ番組などを予定している。熊谷会長は「ウポポイ(民族共生象徴空間)などを訪れた観光客が少しでも白老にとどまって関係人口や滞留時間が増え、それがまちの経済活性化につながれば」と話している。
本祭の詳細はウェブサイトhttps://www.shi-ra-oi.jp。