洋上風力発電事業を巡り、風力発電会社「日本風力開発」(東京)の前社長から総額約6000万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は7日、受託収賄容疑で、衆院議員の秋本真利容疑者(48)=自民党を離党=を逮捕した。現職国会議員の逮捕は、2020年6月の河井克行元法相夫妻以来、約3年ぶり。
同事業を巡る政界の「旗振り役」と参入を狙う企業側との不透明な資金のやりとりは、汚職事件に発展。特捜部は癒着の実態解明を進める。
特捜部は認否を明らかにしていないが、関係者によると、秋本容疑者は容疑を否認している。同社の塚脇正幸前社長(64)は任意の事情聴取に秋本容疑者への賄賂だと認め、「日本風力開発の事業を後押ししてくれることへのお礼の気持ちがあった」と供述。特捜部は、前社長について贈賄容疑で在宅のまま調べるとみられる。
逮捕容疑は19年2月~22年2月ごろ、塚脇前社長から複数回にわたって同社に有利な国会質問をするよう依頼を受け、19年3月~今年6月ごろ、謝礼などの趣旨と知りながら総額約6000万円の賄賂を受け取った疑い。
関係者によると、約6000万円のうち3000万円は、日本中央競馬会(JRA)の個人馬主に登録するに当たり、継続的な保有資産が7500万円以上という要件をクリアするため、19年3月に衆院第1議員会館の事務所で塚脇前社長から無利子無担保で借り入れた。
残る約3000万円のうち1000万円は、議員会館事務所で塚脇前社長の部下を通じて手渡され、馬の購入費に充当。2000万円余りは、21年秋に秋本容疑者と前社長らの共同出資で設立した馬主組合「パープルパッチレーシング」が管理する馬の厩舎(きゅうしゃ)代などに使われた。
日本風力開発は、青森県の陸奥湾などで洋上風力発電事業への参入を目指し、地質調査や地元住民向け説明会などを実施。20年11月に始まった秋田、千葉両県沖での事業の公募に応募したが選定されなかった。
秋本容疑者は19年の国会質問で、青森県での事業について、防衛施設への影響を理由に過度な規制をかけないよう求めるなどした。22年には「次回の公募から評価の仕方を見直していただきたい」と要望していた。