―震災から5年をどのように捉えているか。
「思い返すと、たくさんのことがあった。大きな事業は現時点で95%を完了した。早来町民センターの耐震化改修、防災支援倉庫の整備が残っており、そこが終われば一通りめどがつく。町民センターは大ホールを体育館に、3階部分は個室約20部屋を用意し、普段は合宿所として使いたい」
―早来中学校の再建は時間を要する大事業だった。
「4年かかったが、今年4月に4校が一つになる小中一貫の義務教育学校『早来学園』としてスタートし、震災から5年を前に大きな復興事業を完了した。建物ができる前から『町全体が学校』と言ってきた通り、さまざまな場所であびら教育プランを実行できる。多くの方に注目され、視察の受け入れも予定している。早来学園が町民を含めいろんな方に利用してもらえる学校になれば」
―心のケアの部分ではNPOや独自の活動が活発だ。
「復興再建の中で保健師を中心にしたフォローは行っているが、コロナ禍により対面が許されない時期の影響が大きかった。本当は元気づけなければいけない地域コミュニティーの強化やイベント、お祭りなどは震災直後からやっていく必要があったが、コロナ禍で続けられなかった。何年かの空白の期間で担い手が年を取ったり、転出したりと課題が進み、元に戻すところが大変だ。一方、安平地区で協議会主催の夏祭りが復活し、近隣地区の方も集まってにぎわいを創出するなど、新しい動きも出てきた。行政としても側面で支えていきたい」
―移住施策の効果が出てきた。
「昨年、合併後初めて(転入が転出を上回る)社会増があった。今年は7月末現在、転入が99人上回り、自然減を含めても、人口増になっている。町の復旧・復興、教育施策の取り組みが少しずつ受け入れられてきた。新規就農者もいるなど仕事はさまざま。遠浅地区や安平地区にも転入があり、全域にバランスよく増えてきた」
「今までネックだった光通信環境が、昨年4月から全域に整備されたことも大きい。町内での起業や体験事業を通して移住する方もいる。リモートの方、札幌や苫小牧まで通う方、仕事を辞めて移住する方もいて、われわれの時代の常識からいい意味で変わってきた」
―5年後、10年後、どういう町を目指していくか。
「教育関係は早来地区がある程度形になったので、追分地区の学校の一体感という点で、これからの未来を描ける学校づくりを目指したまちづくりを行う。デジタル化の関係も、高齢者にも便利なコンビニエンスストアでの印鑑証明や住民票の交付を今年度中にやっていきたい。交通弱者、生活弱者に寄り添い、安平、遠浅各地区でも快適に暮らせる取り組みを進めたい」
「震災でブラックアウト(大規模停電)を経験したので、今後災害が発生しても電源の喪失がないよう、今年度中に計画を作り、10月には『ゼロカーボンシティ宣言』をしたい。今夏の暑さは来年以降も続くことが想定される。自然エネルギーを使って電力コストを上げないようにして、公共施設や学校のエアコン設置など、生活環境や学ぶ環境の拠点を整備し、快適性を高めていきたい」