2018年9月の胆振東部地震から、きょうで5年。5年前の6日未明、午前3時7分に始まった揺れを覚えている。後ろから体当たりされたような揺れで目が覚め、本箱の戸が開き、本や資料を吐き出し始めた。日の出までまだ2時間ぐらいか。ラジオを探し出し、階下に降りた家人と震源や震度をどなり合った。
過去の大地震や洪水などの災害の記録を調べ、次の被害を減らすのも自分の仕事のはずなのに、記憶の何とあいまいなこと。数日後、地割れに目を凝らしながら震源地の厚真町などに向かい、友人や知人宅を駆け足で見舞った。無事かどうかや被害の度合いを聞き回ったものの、いまだに頭の中にしっかりとは収まっていない。地震から1カ月半ほど後に母が亡くなり、葬儀の準備や連絡などに追われたせいもある。自分も体調を崩し入院や手術を経験した―と言い訳を探す。
ふるさとの山の形、沢や川に沿った道のうねりは、何万枚もの未整理な静止画像のまま、記憶に残っている。復旧や復興の工事が進んだという。崩れて茶色になった山の斜面にも緑色が戻ってきたようだ。農業の実りの色の輝きも、これからが本番だ。早朝からテレビの前に座って、友人や知人、親類の過ごした5年という時間の長さと重みを想像した。(水)