消防隊員の身を守る防火服は、炎や熱、水に強いなど高機能な素材でできているが、耐用年数の経過などで毎年多くが廃棄されている。捨てられる防火服を有効活用しようと、別の製品に生まれ変わらせる取り組みが広がっている。
名古屋市熱田区の障害者施設「名身連第一ワークス」では8月、手足などに障害のある利用者がミシンに向かい、同市消防局の深緑色の防火服を斜め掛けのボディーバッグに作り替えていた。
同市消防局によると、防火服は軽くて強度がある「アラミド繊維」が使われている。1着約14万円するが、厳しい現場で着用されるため年約200着が廃棄されており、これまでは一部を除き、業者に費用を払って処分していた。
「何とか有効活用できないか」。依頼を受けた名身連第一ワークスは2021年、ボディーバッグにリメーク。防火服の反射材をワンポイントとして生かし、昨年5月に同区のイベントで1個4800円で販売したところ、SNSで話題になり計10個が完売した。今年は約100着提供を受け、さまざまな商品を製作している。
岡山市消防局では21年、防火服の難燃性や衝撃吸収性に着目し、廃棄予定だった約250着を防災頭巾100個にリメークして市内の小学校に寄付した。協力した制服メーカー「大和被服」(岡山県倉敷市)はその後、防火服で作った商品をブランド化。他の消防からも融通してもらい、レジャーシートなどアウトドア用品を製作して通販サイトで販売している。
また、横浜市消防局でも民間企業と協力し、たき火道具を収納するバッグなどにリメークしている。
名古屋市消防局の担当者は「大切な命を守る防火服が新しい使命を果たせるのはうれしい。廃棄コストを抑えられるだけでなく、リメークした製品を使ってもらうことで防災意識も高まると思う」と話した。