京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され36人が死亡、32人が重軽傷を負った事件で、殺人や殺人未遂などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の初公判が5日、京都地裁である。平成以降で最悪の犠牲者を出した放火事件は、刑事責任能力の有無が争点となり、被告が事件の動機などに関して何を語るのかが焦点となる。
関係者によると、来年1月25日の判決までに審理は計23回に上り、うち被告人質問が11回を占める見通し。多くの遺族や被害者が参加し、被告に直接質問するとみられる。遺族や被害者に配慮し、一部は被害者の氏名を明かさない匿名化の措置が講じられ、法廷内についたてが設けられる。
初公判後の7日から事件に至る経緯や動機に関して被告人質問が集中的に行われ、目撃者や京アニ社長らの証人尋問も実施される。10月23日からは責任能力の有無が審理され、起訴前と後に精神鑑定を実施した医師の証言を踏まえて11月6日に中間論告と弁論を行い、裁判官と裁判員はいったん中間評議に入る。
11月27日以降は量刑が争点となり、遺族らが意見陳述するなどし、12月7日に結審する。検察側は遺族や裁判員に配慮し、凄惨(せいさん)な遺体の写真などの証拠提出は見送るという。
事件は2019年7月18日午前10時半ごろ起きた。青葉被告はガソリンを従業員の体や周辺にまいて放火し、3階建て延べ約691平方メートルが全焼した。建物内にいた70人のうち、逃げ遅れるなどした36人が亡くなった。
青葉被告自身も重いやけどを負い、約10カ月間入院した。20年5月に逮捕され、鑑定留置を経て同12月に起訴された。被告は逮捕後、「小説を盗まれたから火を付けた」「多くの負傷者が出そうだと思い第1スタジオを狙った」と供述した。
ガソリンを使った手口を参考にしたとみられる放火も起き、21年には大阪・北新地の雑居ビルのクリニックが放火され、26人が死亡した。