東京電力福島第1原発の、放射性物質トリチウムを含む処理水の放出が始まって1週間が過ぎた。一帯の水質や魚類の汚染度に目立った変化はなく、廃炉作業本格化への転換点としては順調な滑り出しに見える。しかし中国の放出への反発は厳しく、大量の迷惑電話が内外の公共施設にかかってきたり、中国の日本人学校に石や卵が相次いで投げ込まれた。
多核種除去設備(ALPS)で処理後の水は海洋に放出―と方針が決められたのは2021年4月。これまでに1000基強のタンクが建造され処理水はすでにタンク容量の98%に達したという。
中国は日本産水産物の全面輸入禁止の方針を発表。撤回を求める日本に「核汚染水の放出中止」を求めるばかりだ。
きのう9月1日は、百年前の1923(大正12)年に関東大震災が発生。「在留朝鮮人や中国人が井戸に毒を入れた。放火をした」と自警団などがデマを広めて虐殺を始めた日とされる。ちくま新書「歴史認識 日韓の溝」を開き事実をあいまいにした議会質疑や大人が加筆した可能性のある子どもたちの作文を読み直した。日中の対立の意味や行方を静かに考えたい。廃炉はこれからが本番。水に流すばかりが対策ではない。誠実な謝罪と反省を基礎に置かねば進まない。(水)