2018年9月6日。本社編集局は早朝から右往左往していた。停電でパソコンが動かない。新聞を印刷する輪転機も止まったままだ。新聞を発行できるのか。そんな不安の中でも「発行しない」という選択肢は思い浮かばなかった。
社所有の車両から一時的な電源を確保し、災害協定を結んでいる新聞社の力を借りて何とか当日に印刷した。暗闇の中を配達に奔走した販売店の力も大きかった。午後9時すぎに新聞が届いた読者もあった。それでも停電の中で、懐中電灯を照らしながら読んだという読者からの手紙が寄せられた。目頭が熱くなった。あの胆振東部地震から5年がたつ。
被災地の自治体の首長と話す機会があった。復興に話題を向けると、建物や道路など目に見える部分の復興はかなり進んだという。ただ、どの首長も口をそろえて力説するのが被災者の「心の復興」は、むしろこれからということだ。
被災で傷つき、悲しみを背負いながらその地域で暮らす人々の内面をどうおもんぱかり、それを癒やしていくのか。その方法や支援はどんなことがあるのか。大変難しい問題が横たわる。一人ひとりが尊厳を取り戻していくのには時間が必要なのだろう。そうした問題に向き合うことを忘れてはならない。 (昭)