感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」が1日、発足した。初動対応が遅れた新型コロナウイルス禍の教訓を踏まえ、政府行動計画の策定や企画立案、調整を一元的に担うことで対策の迅速化を図り、次の感染症危機に備える。
統括庁の創設は、岸田文雄首相が2021年9月の自民党総裁選で公約に掲げていた目玉政策の一つ。今年4月に新設を盛り込んだ改正内閣法などが成立した。
同庁は内閣官房に設置され、担当大臣は後藤茂之経済再生担当相が就任。トップの内閣感染症危機管理監には栗生俊一官房副長官が就く。専従職員は通常38人だが、緊急時には101人まで増やし、他省庁との併任も含めて最大300人規模で対応する。
新型コロナ対策を巡り、政府と都道府県の足並みが乱れた反省を踏まえ、知事に対する首相の「指示権」を強化。「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の発令中に限られていた指示権の発動は、政府対策本部の設置時点で可能とし、事業者に営業時間短縮などの命令を出す規定も明確化し実効性を高める。
統括庁の設置に合わせ、厚生労働省は1日付で省内に「感染症対策部」を新設。同庁と連携して関連施策の企画・立案を進める。
2025年度以降には、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターが統合した専門家組織「国立健康危機管理研究機構」が発足する。米疾病対策センター(CDC)をモデルとし、感染症予防や調査、研究、人材育成などを行う。有事の際は統括庁と連携し、科学的知見を政策に反映させる方針だ。