【北京時事】東京電力福島第1原発の処理水放出から31日で1週間となる。中国政府は直後に日本産水産物を全面的に禁輸。国営メディアは「核汚染水の放出だ」と報じており、日本製品に対する不買運動も広がっている。日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、先行きへの影響が懸念される。
「日本産の水産品は一切扱っていない」。北京市内の日本料理店が並ぶ一角には、こうした看板が設置されていた。市内の天ぷら店の従業員は「客足は以前の半分以下に減った」と明かす。スーパーの棚からは日本製品の撤去が進む。30代の中国人女性は「特に肌に触れるものについては、日本製を当面使いたくない」と話し、化粧品を欧州製に切り替えたという。
北京駐在の日系食品メーカー幹部は「先方から取引を一部停止された」と訴えた。中国政府は今月から訪日団体旅行を解禁したものの、インターネットには日本への旅行を取りやめたとする投稿が相次ぐ。日系航空大手によると「解禁後も予約数は増えていない」という。
中国政府は処理水について「人々の健康に問題が起きないとは証明できない」(外務省)と主張し、7月以降、日本産への規制を振りかざしてきた。処理水放出の翌日には水産物の加工利用なども禁じると表明し、手綱を一段と引き締めた。先の日系メーカー幹部は「今は嵐だ。日本のイメージが悪化しており、販売減は少なくとも半年は続く」と予想した。在中国日本大使館は、垂秀夫大使が29日に在中日系企業の幹部と意見交換を行ったと明らかにした。
中国はこれまで、外交的に対立する国や地域に圧力をかけるため「輸出規制」を多用してきた経緯がある。2020年にはオーストラリアが新型コロナ発生源に関する国際調査を求めたことに反発し、豪州産の大麦やワインの輸入制限に踏み切った。豪州で新政権が発足し、関係改善の機運が高まったことを受け、今年に入り大麦については規制を解除したものの、ワインの方は規制が続いたままだ。
中国共産党関係者は対日輸入規制の背景には、日本が7月に対中半導体輸出管理を強めたことへの「相当な不満がある」と話す。日本側の規制緩和も困難とみられ、中国の対抗措置が「数年単位で長期化する可能性もある」(同)との見方も出ている。