第1部 4 にぎわい取り戻す 震災、コロナ乗り越え まつり通常開催に

  • 特集, 胆振東部地震から5年 今を伝える
  • 2023年8月29日
5年ぶりの通常開催でにぎわいをみせた「あつま田舎まつり」のパレード=6月

  「震災と新型コロナウイルスの二つの『災害』を乗り越え、やっと日常が戻ってきた」―。6月24、25両日に厚真町の表町公園で開催された「あつま田舎まつり」で、事務局員として携わった町職員の森田綾さん(31)はほっとした表情を見せた。胆振東部地震が発生した2018年以来、田舎まつり音頭パレードが市街地に戻った。コロナ5類移行もあって5年ぶりの通常開催に、沿道は大勢の地域住民らでにぎわった。

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   あつま田舎まつりはほぼ半世紀にわたって続いている厚真町の一大イベント。中心街を練り歩くパレードや花火大会などを目当てに、震災前は例年約2万人が入場したが、震災翌年の19年はイベントの開催自体が危ぶまれた。インターネットの資金調達クラウドファンディング(CF)で、支援を呼び掛けて開催にこぎ着けた。表町公園は仮設住宅が立ち並んでいたため、会場を町内のかしわ公園野球場に変更し、パレードも同球場周辺で行った。

   20、21年はコロナ禍で中止し、22年は会場こそ表町公園に戻ったが、感染対策のためパレードを取りやめるなど規模を縮小。森田さんは「19年は場所の変更でいつもより寂しい感じ。22年も制約下だった。名前は同じだが、全く別の祭りを運営している感じだった」と率直に振り返る。今年はパレードも中心部で5年ぶりに復活し「地域の伝統文化として祭りを今後も残し、厚真町を知ってもらえるよう尽力したい」と気持ちを新たにする。

   過去10年で最多となる約2万8000人が訪れ、厚真町観光協会の原祐二事務局長も「たくさんの人に来てもらい、ありがたかった」と笑顔を見せる。「お客さんも多く、出店も繁盛していた。(地震やコロナ)以前の姿に戻りつつあるきっかけになる日だった」と強調する。

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   「安平町の夏はうまかまつりがないと始まらない。5年ぶりにいつもの夏が戻ってきた」と安平町職員の横谷健さん(42)も力を込める。5年ぶりに通常開催された「あびら夏!うまかまつり」(7月1、2両日)の事務局員を務めた。同まつりも19年はメイン会場のときわ公園が地震による地割れの影響で、同公園内のスケートリンクに場所を変更した。20、21年はコロナ禍などを踏まえて中止。22年は入場者を町民に限定し、開催も一日に縮小した。

   今年の通常開催は2日間で約2万9000人が入場。メロン早食い競争や花火大会などが盛り上がり、飲食ブースでは完売も相次いだ。同まつりは料理のうまさ、出し物などの「上手(うま)さ」、馬産地の馬の三つの「うまか」にちなんでいるとあり、「一つでも欠けると成り立たず、通常開催には特別な思いがある。この思いを忘れずイベントを企画し、まちを盛り上げていきたい」ときっぱり。町民の生活安定を第一に震災からの復興を目指し、イベントの通常開催を通して日常を取り戻す。

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