第1部 3 子育て世代が移住に関心 人口増へ町独自の 教育プラン―安平町

  • 特集, 胆振東部地震から5年 今を伝える
  • 2023年8月28日
移住者向けの体験ツアーで完成したばかりの早来学園内を見学する参加者=1月

  「町の人口が減少し、特に20~40代が少なくなった。単純に人口を増やす施策ではなく、教育や子育てを魅力化しようという話が以前からあった」。安平町政策推進課の木村誠課長補佐は、現在進めるまちづくり施策の背景について説明する。同町は教育を柱にしたまちづくりを掲げ、子育て世代をターゲットに移住定住施策を展開。被災した早来中学校の再建に絡めて、今春開校した小中一貫の義務教育学校「早来学園」や社会教育事業「あびら教育プラン」といった町独自の取り組みが、子育て世代の関心を集めている。

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   安平町は胆振東部地震で大きな被害を受け、発災から3年ほどは年間100~200人ほどの規模で人口が流出していたが、風向きが徐々に変わりつつある。2022年(1~12月)は転入者が転出者を15人上回る「社会増」となり、06年の合併以降では初の転入超過となった。今年も7月末現在99人の社会増で、自然減を含めた人口動態でも上向きになっている。

   昨年6月末に町や地元団体、NPO法人などでつくる「あびら移住暮らし推進協議会」を発足。問い合わせが20年に比べて約10倍に増え、対象も従来の高齢者層から、子育て世代の割合が多くなった。今年1月には子育て世代向けの移住体験ツアーを早来地区で開き、道内外から7組21人が参加。はやきた子ども園や小中一貫の義務教育学校「早来学園」を見学し、参加者は町内に移住した場合に期待する教育や子育てへのイメージを膨らませた。

   加えて、ただ移住してもらうことをよしとせず、移住の分野を専門にする地域おこし協力隊や集落支援員を配置し、移住後の生活の悩みや困りごとまで手厚くフォローする。通信の環境も町内全域で整備され、昨年まで反応がなかった民間賃貸共同住宅の建設についても、今年に入って2事業者が手を挙げており、住まいの確保に向けて準備が進んでいる。

   さらに次世代半導体製造ラピダス(東京)の千歳市進出に伴い、通勤圏で優位性の高い安平町の社会増を後押しする可能性は大いにある。及川秀一郎町長は「これからの推計が大きく変わっていく可能性がある」とチャンスに捉えながら、さらなる魅力化を図っていく考えだ。

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   昨年1年間の統計を見ると、厚真町も2年連続の社会増で26人増えた。地域おこし協力隊を積極的に採用するほか、移住者向けの子育て支援住宅もすぐに埋まるなど、依然として需要は高い。むかわ町も外国人の農業受け入れもあり、4人の社会増となった。移住施策は決して即効性のあるものではないが、胆振東部3町は震災の復興と並行して、それぞれの特徴を生かした移住施策を打ち出すことで、人材の確保に力を注いでいる。

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