東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が24日始まった。事故発生から12年半。東京五輪・パラリンピックの誘致に結論が出る2013年9月の国際オリンピック委員会で、当時の安倍晋三首相が汚染水は「アンダーコントロール」(制御されている)と宣言してから10年。地元漁業者の苦悩は変わらないどころか、深まっている。さらにこの先、膨大な量の処理水を流し終えるまでに30年程度かかるとされる。
「ずっと続くかもしれない風評との戦いを強いられるんだよ」。祖父の代から続く3代目の漁師が全国紙の取材に語っていた。家族が幸せに暮らしていた震災前に戻りたい―とも。
消費者庁は13年から「風評に関する消費者意識の実態調査」を実施している。「放射性物質を理由に購入をためらう産地」に「福島県」を挙げた人の割合は、同年2月の第1回調査で19・4%だったのが、今年1月には5・8%に減った。「食品の産地を気にする」理由で「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と答えた人の割合も27・9%から10・5%まで減ったものの、なお1割を超えている。自分に何ができるかは本当に難しいが、せめて買い物では、風評被害に加担しない選択をしたい。(吉)