【北京、香港時事】中国税関当局は24日、日本産の水産物輸入を同日から全面的に停止すると発表した。日本政府が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出したためとしている。中国は日本にとって最大の輸出先で、日本の生産者や食品業者への影響は避けられない。
中国はこれまで、水産物については福島や宮城など10都県からの輸入を禁じてきたが、これを全国に拡大する。税関当局は世界貿易機関(WTO)で認められた措置だと説明。「国民の生命と健康を守る」などと、禁輸が正当な対応だと強調した。中国外務省の汪文斌副報道局長はこの日の記者会見で、「断固たる反対と強い非難を表明する」と反発した。
中国は処理水を「核汚染水」と主張。既に7月ごろから日本産食品を対象とした検疫を大幅に強化してきた。水産物については新たにストロンチウムやトリチウムの検査を始めたもようだ。通関が滞ったことで、7月の日本からの魚介類輸入額は前月比約%減の3238万ドル(約47億円)に落ち込んだ。
税関当局は声明で「日本食品の放射性物質汚染リスクを強く懸念している」と指摘。今回の禁輸措置は、状況を踏まえ「調整していく」と説明している。一部では、禁輸対象がコメや酒などにも広がるとの懸念も出ている。
一方、中国政府の支配下にある香港政府とマカオ政府も24日からそれぞれ日本産食品の輸入規制を強化。香港では都県産の水産物、マカオでは水産物に加え野菜や果物も輸入が禁じられた。
中国や香港では風評被害が広がり、日本産食品の需要が急速に冷え込んでいる。日本産の扱いをやめる業者も続出。中国電子商取引大手の関係者によると、7月以降に消費者から日本産食品に含まれる原材料の産地に関する問い合わせが急増した。北京市内の日系企業に勤める30代の女性は「当面、日本産を使いたくない」と打ち明けた。
2022年の日本の農林水産物・食品輸出額のうち、中国向けは首位の2783億円、2位は香港の2086億円。中国と香港を合わせると、輸出先のシェアは4割近くに上っており、禁輸による日本の生産者らへの打撃が懸念されている。