自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会、100人)は20日、長野県軽井沢町で研修会を開いた。新たに集団指導体制の下で再出発を期すものの、派閥の「顔」となる会長は引き続き空席で、対立回避を優先した妥協策の色合いが濃い。今後の幹部構成や、9月に想定される内閣改造・党役員人事の行方次第で、摩擦が再燃しかねない情勢だ。
新体制で事実上のトップとなる塩谷立元総務会長は研修会で「しっかり岸田政権を支え、日本の発展につなげていくことがわれわれの役目だ」と派内の結束を重ねて訴えた。今月末までに新体制下の幹部構成を発表する考えも示した。
17日の派閥総会では、意思決定機関として「常任幹事会」を置き、取りまとめ役に塩谷氏を据えることを決定。幹事会の人選は塩谷氏に一任されており、かねて集団指導を主張してきた高木毅国対委員長、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長の「5人衆」の参加が確実視される。
今回の決定は、派内になお影響力を持つ森喜朗元首相の意向が反映されたとの見方が強い。安倍晋三元首相の死去後、森氏は「5人衆」の後ろ盾となってきた。
派内の路線対立が続いていた先月6日には、5人全員を呼び集め早期決着を促した。ハッパを掛けられた「5人衆」は今月3日、塩谷氏と会談。この場で、新体制に移行する流れが固まった。
最後まで新会長選出にこだわった下村博文元政調会長と、森氏は距離を置く。関係者によると、森氏は幹事会のメンバーから下村氏を外すよう求めているという。
一方、派内には森氏が権勢を振るうことへの不満も根強い。森氏が支持する「5人衆」に対しても、「自分たちのことしか考えていない」(中堅)と厳しい声が。下村氏の処遇によっては、不協和音が一段と高まりかねない。
今後の内閣改造・党役員人事では、どれだけのポストを獲得できるかが派閥の求心力に直結する。同派ベテランは「党4役に1人、閣僚に5人を確保しなくてはいけない」と息巻くが、派内はまとまりを欠いており、他派閥からは「派閥の体をなしていない」と足元を見透かすような発言も漏れる。
人事に関する実際の調整は、塩谷氏ではなく、「5人衆」が中心になるとみられる。安倍派若手は「交渉で誰が最も『功績』を挙げたのかで、新会長候補も絞られてくる」と指摘。早くも「次」をにらんだ主導権争いが始まるとの見通しを示した。