東京電力福島第1原発から生じる処理水の海洋放出に向け、岸田文雄首相は21日午後に全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長と会談する。政府関係者が明らかにした。安全性確保と風評対策に万全を期す意向を伝達。早ければ月内に放出開始を目指す政府の方針も伝えるとみられる。
政府は22日に関係閣僚会議を開催し、具体的な放出時期を決定する方向で調整している。政府と東電は2015年、福島県漁連に「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束したが、地元の漁業関係者は放出に反対する姿勢を崩していない。首相は全漁連トップに直接説明して理解を得たい考えだ。
政府関係者は会談に関し「漁業者の理解が進んでいれば、首相は放出を決める」との見通しを示した。政府は9月1日から福島県で沖合底引き網漁が始まることも考慮し、放出時期を判断する。
一方、中国は計画への批判を繰り返しており、日本政府内では、公明党の山口那津男代表が訪中する28~30日の放出開始は避けるとの見方も出ている。
首相は20日に同原発を訪れ、汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)などを視察。東電ホールディングス(HD)の小早川智明社長とも会い、「最大限の緊張感、決意と覚悟を政府と東電が持ち、全力を尽くす」よう呼び掛けた。小早川氏は風評被害や賠償に関し、社内の体制を強化する方針を示した。