天気予報が軍事機密だったと教えられたのは静内町(当時)の支局に勤務していた時だ。以前にも、この欄に書いたことがある。サケの塩蔵の名人と言われたMさんが、東静内の浜辺で海を見ながら教えてくれた。もう40年も前のことだ。「漁師は戦時中、台風が近づいてうねりが出始めても、それがなぜか分からなかったんだ」。いろいろな情報が国民に隠されたことは知っているつもりだったが目の前の海の波の高さも機密とは―。
その仕組みを、14日夜のNHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」で学んだ。実在したアナウンサーらの物語。ラジオ放送が普及する中で「原稿を読んでいた」アナウンサーたちが、国民の勝利のための放送を考えた実践の記録だ。酒席でのどなり合いの場面が痛々しい。開戦を伝えるアナウンサーの叫び声の背景に「軍艦マーチ」のレコード演奏が流され、戦意高揚の効果が上司や同僚から評価された。「大本営発表」が羽振りを効かせる時代が到来し戦果は大きく、被害は小さく伝えられたという。放送網は東南アジアからインド方面まで日本軍と競うように広がりやがて糧食が尽き―。
78年前までの戦争のことだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻など現在の戦争報道のありようも、考えなければ。(水)