浦河町出身で小学6年から高校卒業まで町内で過ごした直木賞作家、馳星周さん(58)=長野県軽井沢町在住、苫小牧東高出身=の講演会がこのほど、日高町富川東の門別総合町民センターで開かれ、町民130人が、日高や馬に対する馳さんの思いに耳を傾けた。
旧門別町120周年を記念し、沙流川のほとりで開館した日高町富内東の門別図書館郷土資料館が、12月に開館30周年を迎えることを記念した行事。
馳さんは、1996年に「不夜城」で小説家としてデビュー。2020年に「少年と犬」で第163回直木賞を受賞した。受賞後の第1作「黄金旅程」では、馬産地・浦河町や日高町を舞台とし、人と馬との物語を描いている。
講演会のテーマは「馬を嫌って日高を出、馬に呼ばれて日高に戻る」。高校卒業後、日高を離れた理由については「小さい頃から馬ふんの臭いが好きでなく、馬のいない所や、とにかく本好きであったことから大きな本屋がある街に住みたかった」と振り返った。
しかし、約7年前、妻の影響で競馬が好きになり、馬が好きになったことなどから涼しい日高地方の素晴らしさ、馬産地の魅力、食の豊かさに感動したという。現在夏の間は浦河町で過ごしている。「出たくて仕方がなかった日高だけど、ふとしたきっかけで馬が好きになり、戻ってきた。馬に呼ばれたのかな」と口にした。
自分の人生を振り返り「年齢を重ねると自分の未来を限定してしまうけど、いろんな選択肢があり、いろいろ挑戦できるもの」と語った。
講演後はトークイベントが開かれ、「ペンネームの由来」や「小説は誰に向けて書いているのか」「作家として伝えたいこと」などの質問に丁寧に答えていた。