<20>昭和39年 工場立地で地元企業頑張る 工業都市の拡大で鉄北に新町名

  • 特集, 郷土の戦後昭和史
  • 2023年8月18日
国立苫小牧工業高等専門学校の開校式・第1回入学式
国立苫小牧工業高等専門学校の開校式・第1回入学式
王子製紙新工場から搬出される新聞用紙巻取
王子製紙新工場から搬出される新聞用紙巻取
造成が進む美園・三光などの鉄北地区
造成が進む美園・三光などの鉄北地区
大泉源郎市長
大泉源郎市長
苫小牧の工業出荷額等推移(苫小牧市史より)
苫小牧の工業出荷額等推移(苫小牧市史より)

 

 昭和39(1964)年は、前年に第1船を迎えた苫小牧港の整備と利用が進み、工業地帯に企業が張り付く中で、多くの新たな役所や庁舎、施設、建物ができ、街の様相が大きく変化した年であった。苫小牧は国の全国総合開発計画と新産業都市計画の中にはまり込みつつ、拡大を続ける。双葉町、音羽町、美園町など鉄北地区に八つもの新しい町ができ、駒沢大学付属苫小牧高校や国立苫小牧工業高等専門学校、苫小牧地方高等職業訓練校が開校した。苫小牧警察署、苫小牧簡易裁判所の新庁舎も完成。王子製紙は100億円の事業費で進めた新工場を稼働させたし、まちなかでは苫小牧信用金庫の新本店も落成した。

  

 ■頑張る地元企業

  

 それまでの高度経済成長の中で京浜、阪神などの大都市に集中し過ぎた重化学工業を地方に分散して公共投資や人口集中、環境負荷などの地域格差を是正するというのが全国総合開発計画であり、その分散先が新産業都市であった。この分散先は全国で44の候補地があったが、最終的に15地区に絞られ、その一つが苫小牧を含む道央地区(札幌から室蘭に至る19市町村)であり、苫小牧は鉄鋼、石油コンビナートなどが立地する工業開発の拠点とされた。

 ただ、昭和39年のこの時点で、重化学コンビナートは影さえも見えないし、賛否もあった。この年立地したのは岩倉ホモゲンや三星糸井工場、王子工営などであり、道外企業はそう活発ではない。地元企業の頑張りが目立ち王子工営などは、翌年春に向けて従業員を募集したところ、中卒者枠30人に対して苫小牧を中心に全道から399人もの応募があり、13倍という高倍率が周囲を驚かせた。

  

 ■即戦力の技術者が欲しい

  

 高度経済成長は続く。その中心は、工業の発展であった。同成長期初頭の昭和30年の全国工業生産額は約6兆8000億円であり、終盤の昭和46年には12倍以上の約73兆円にもなった。分野別には、繊維・食品工業の割合が減って機械工業が増えた。

 だから、どこの企業でも機械や電気の専門家が足りない。それを短期間で育て上げ、産業(工業)の担い手にしようと設置されたのが工業高等専門学校であった。高校、大学工学部と進めば最低7年間は必要だが、これを5年間でやる。年限としては短大卒並みだが、専門分野の修学時間数は四年制大学の工学部をむしろ上回る。産業界の期待が集まり、昭和37年に1期12校が開校した。以降、毎年10校ほどずつ増え、苫高専は3期校として同39年に機械工学、電気工科、工業化学の3科で開校した。重化学工業地帯形成を目指す苫小牧への設置は、国としては当然といえば当然であった。

 しかし、校舎が間に合わず、3カ月ほど弥生中学校の4教室を仮校舎とした。入学生は127人で、うち女子は5人。4月20日の開校式・第1回入学式では真井耕象校長が「現在、日本の産業経済は技術者を必要としている。諸君はその担い手として実践的技術を身につけ社会発展に貢献してほしい」(概要)とあいさつした。

 これに先立って18日には駒沢大学付属苫小牧高校の開校・第1回入学式が行われた。こちらも校舎建設は間に合わず、半年間は苫小牧東小学校を仮校舎とし、開校・入学式も同小学校体育館で行われた。入学生は男子のみ396人。女子の進学先として3年前に苫小牧女子高校が開校していた

 いかにも人口急増の工業都市らしい現象であった。

  

 ■第一線刑事の座談会

 

 美園地区では昭和35年から、明野地区で同36年から、清水地区で同37年から埋め立て事業が始まり、宅地や工場用地が造成されていた。

 もともと現在の美園町や三光町から木場町などの一帯は緑町という一つの町名であった。そこが造成され、いよいよ住宅が張り付き、商店街が発達し、緑町を分割して新町名を付けた。音羽町、双葉町、住吉町、三光町、春日町、木場町が昭和39年10月に、やや遅れて翌11月に美園町、清水町が誕生したのである。ただ、人と金との集中、にぎわいは犯罪をも呼んだ。

 この年の師走、珍しい座談会が開かれた。苫小牧署で防犯を担当する刑事たちの暴力団対策を語る座談会であった。出席したのは防犯課長、第一線の探偵長、刑事ら。主催は苫小牧民報社。

 「道警の調べでは、苫小牧地方で暴力団組織に入っていると思われる者は、昭和37年には約40人だったが200人以上に増えた」

 「昨年(昭和36年)辺りから本州の暴力団の北海道進出が目立ち、東のI、西のYなど大きな組織が札幌を中心として活動している。苫小牧の場合も港の開発によって人の出入りが激しくなったことでいろいろな角度から暴力団の絶好の場所として狙われている。最近の暴力団は親分を社長、子分を従業員と呼ぶようになり近代化されているのも特徴だろう」

 「道内に根を張っている暴力団は、本州からの進出で近ごろはなめられているということで戦闘的になっているようだ」

 「勢力をひろめようとネコもシャクシもサカズキをかわす。以前だと泥棒をしたような者は相手にしなかったものだったが」

 「組織が大きくなればなるほど資金が必要になり、いろいろ考える。女とグルになっての前借詐欺が多い。特に今はホステス不足だから、飲食店業者も女の話になるとすぐに耳を傾ける。どんな女かは見当がつくはずだ」

 「不動産業者も狙われた。50万円脅し取られた例もあったが、被害者はお礼参りがうるさいからと届け出ない」

 「いったん弱みを見せるとどんどんつけ込んでくる。苫小牧ではお礼参りなどあった試しはない。被害者はありのままの事を届け出てほしい」(以上苫小牧民報より概要)

 人と金が動くところに闇が生まれる。それは第一線の刑事が新聞紙上で訴えねばならないほどのものであった。

  

一耕社代表・新沼友啓

  

 ■一大新産業都市建設し福祉都市に

  

 昭和39年4月4日、苫小牧を含む道央地区が正式に新産業都市として指定された。これ受けて大泉源郎市長は中小企業重視、福祉都市形成を強調し、次のように話した。

 「待望の正式指定は喜びに堪えない。道央地区の拠点として苫小牧臨海工業地帯の整備が進展するが、苫小牧市としては特に中小企業団地、住宅団地や工業用地造成に力を入れたい。道央新産都市建設のため今後国や道の協力を得て、臨海工業地帯内の企業誘致については前向きに努力する。この結果、一大新産都市を建設し福祉都市として苫小牧の開発を進める。特に工業開発にウエートを持つ苫小牧は鉄鋼、石油を基幹産業とする重化学コンビナート化を積極的に推進する考えである。この中で、市民福祉の向上を図るためあらゆる施策を進め、緑地化を図って工業開発を促進する」

  

 【昭和39年】

  

 苫小牧の世帯数18,827戸、人口82,706人

  

 <この年の立地企業>

 浜野繊維工業苫小牧工場(資本金45,000万円、従業員10人)、苫小牧コンクリート沼ノ端工場(750万円、30人)、三星糸井工場(1,250万円、100人)、玉造鋼業苫小牧工場(5,750万円、40人)、北海道ロックラーパイプ苫小牧工場(2,000万円、50人)、札幌生コンクリート苫小牧工場(10,000万円、19人)、広島燃料興業苫小牧工場(60,000万円、34人)、北光ブロック工業(5,000万円、従業員16人)、王子工営(30,000万円、130人)

 ※以上苫小牧市史より

  

 3月19日  苫小牧港が入国管理令による出入国港に指定

 4月     苫小牧地方高等職業訓練校開校

 4月 4日  道央地区新産業都市指定

 4月18日  駒沢大学付属苫小牧高校開校

 4月20日  国立苫小牧工業高等専門学校開校

 5月24日  苫小牧警察署庁舎新築落成

 6月11日  苫小牧信用金庫本店新築落成

 8月 1日  王子製紙苫小牧工場新工場落成

 10月15日 緑町地区を分割し、音羽町、双葉町、住吉町、三光町、春日町、木場町を新設

 10月27日 苫小牧簡易裁判所新築落成

 11月 8日 ダイヤル市外通話始まる

 11月15日 美園町、清水町新設

 12月 1日 東京開拓部落消滅

  

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