(2)顔の表現

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2023年8月17日
板状土偶 苫小牧市柏原18遺跡出土 縄文時代晩期

  日本列島で人を模した遺物が登場するのは縄文時代草創期だが、範囲はごく一部に限られる。古い時代の土偶は顔がないか、顔面が表現されていないものが多く、顔面表現を忌避していたと考えられる。

   北海道では縄文時代中期(約5000年前)から東北地方北部と北海道に広がった円筒式土器に伴って板状の土偶が広く見られるようになり、この頃からさまざまな顔面表現が施されるようになる。その後、縄文時代晩期(約3000年前)にかけて東北地方では、目がアラスカの先住民族が使用する遮光器に似ていることから遮光器土偶と呼ばれる土偶に代表される中空土偶が作られるようになる。

   東北地方の土偶の顔面表現は多様で、緻密に再現されることもあれば、目を大きくするなど極端にデフォルメされたものもある。一方で、北海道では主に板状土偶が作られ、顔面表現は目鼻のみのシンプルなものが多く見られる。

   土偶は人を表現しているとも、超自然的な存在を表現しているともいわれている。人の顔、あるいは動物の顔を模していると見られるものもあれば、仮面を付けた状態を表現しているものもある。

   本展では、さまざまな美術作品と土偶や人面付土器を混ぜて展示している。考古遺物の顔面・人体表現と現代作家の顔面・人体表現の似ているところ、違うところを見比べて、縄文時代の人々が人型を模した遺物に何を表現したかったのか、考えてみてほしい。

  (苫小牧市美術博物館学芸員 岩波連)

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