社会的孤立は発症リスク増 うつ病では2・5倍に

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  • 2023年8月10日
人間関係を豊かにすれば、認知症も防げる

  認知症の12の危険因子のうち、9番目と10番目にお知らせするのは、うつ病と社会的接触の少なさです。これらを改善できれば、それぞれ認知症の4%を予防する効果があります。

   気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった精神症状に加えて、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状があり、日常生活に支障が出ている場合、うつ病が疑われます。

   うつ病と診断されたことがある人では、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが2・5倍高いことが示されています。逆に認知症の症状の一つとしてうつ状態が表れることもあります。認知症とうつ病の関係は複雑です。

   高齢者のうつ病には、加齢に伴う身体機能の低下や、他の病気が密接に関わっていることが多く、「身体と心」の両方に対して対策を講じる必要があります。身体に対しては、例えば長く続く慢性の痛みがある場合、うつ病に対する治療だけではなく、痛みに対する治療が必要になります。心に対しては、少し休んでリラックスすることも大切だと理解していただきます。

   うつ病の症状が強い場合は抗うつ薬による治療が必要になります。自殺につながることもありますので、早めに専門医を受診する必要があります。

   社会的接触の少なさも、重要な認知症の危険因子です。高齢になり社会的な役割を失うことや、伴侶に先立たれることなどが原因として考えられます。

   社会的接触の多さが認知症を予防することは、多くの研究において、男女ともにほぼ一貫して示されています。社会的な刺激は、脳に刺激を与えることで認知症予防効果を持つものと考えられます。

   社会的な孤立を防ぐためには、趣味を持つことなどで周囲との人間関係を保ち続けることが重要です。身体的には運動が有効です。そして家族だけでなく、地域のサポート体制も求められます。

  (下畑享良・岐阜大教授、イラストはスギウラフミアキ)

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