(上)市民周知と若年層への継承

  • 未来につなぐ 苫小牧、八王子姉妹都市50年, 特集
  • 2023年8月7日
安間教育長の話に耳を傾ける児童生徒ら=7月26日、八王子市役所

  「未来をつくるのは皆さん。改めてお互いの良さに気付き、これからの(両市の)関係を発展させてほしい」

   7月26日、八王子市役所の会議室。苫小牧市こども研修団の表敬訪問を受けた八王子市の安間英潮教育長は児童生徒たちにこう呼び掛けた。

   今月10日で姉妹都市締結丸50周年を迎える両市。その縁は江戸時代、北方警備や開拓のため八王子千人同心が勇払原野に入植したことにさかのぼる。1973年に姉妹都市の盟約を締結して以来、両市の市民有志が互いのまちの祭りを行き来するなどして友情を育んできた。

   しかしながら、研修団の子どもたちに「八王子についてどのくらい知ってる?」と問い掛けると「こども研修に行くまで、どこにあるのかも知らなかった」「姉妹都市ということしか知らない」といった返答が少なくなかった。

   八王子市は東京都多摩地域南部に位置する。都心から西へ40キロメートルで、面積は186・38平方キロメートル。56万1582人(6月末現在)の人口を擁する。21の大学・短期大学・高専があり、約10万人の学生が在籍する全国でも有数の学園都市だ。市の西側が高尾山などが連なる山間地になっていて、夏は暑く冬は寒い盆地型気候。7月12日には最高気温39・1度を記録。ごみ排出量の少なさはトップクラスで、2021年度の1人1日当たりのごみ排出量は人口50万人以上の都市の中で全国1位だ。

   一方、苫小牧市は面積が561・58平方キロメートルと八王子市の約3倍あるが、人口は3分の1程度の16万7373人(7月末現在)となっている。

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   今回のこども研修では、昨年度の苫小牧市未来創造こども会議で児童生徒が姉妹都市50周年記念事業として提案した児童交流、ごみ減量対策を学ぶ施設見学、ご当地マンホールぶたの交換を実現させたほか、八王子千人同心の原胤敦、新介の墓参りも行った。

   「マンホールぶたの交換はいいアイデアだった。(市民に)姉妹都市を知ってもらう機会になる」と振り返るのは清水小6年の對馬羽菜さん(12)。これまで小中学校の給食にご当地グルメ「八王子ラーメン」などが登場し、給食だよりで姉妹都市と目にしたことはあったというが、「どんなまちかイメージは湧かなかった」と打ち明ける。

   勇払中2年の忠鉢心那さん(14)は「都会だと思っていたが、緑もあって札幌に近かった」と印象を語った上で、苫小牧の街並みと比較してみると「八王子市の方が(都市としての規模は)大きい」と述べた。

   一連の研修を通じ、子どもたちは市民の八王子市に対する認知度不足や後輩たちに今回の経験を伝えていく必要性を実感した様子。「ポスターで姉妹都市であることをもっと市民周知すべき」「どんどん下の(世代の)子たちにも八王子に行ってほしい」「交流の歴史を受け継ぎたい」などと口々に語った。

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   苫小牧市のこども研修事業で市内の小5~中3の34人が7月26~29日の3泊4日で、姉妹都市締結50年の東京都八王子市を訪れた。児童生徒たちの現地での経験を通じ、これからの姉妹都市交流の在り方を考える。

 (報道部・樋口葵)

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