2018年9月の胆振東部地震発生から5年を前に、震度7を観測した厚真町が主催するシンポジウムが4日、町総合福祉センターで開かれた。被災者支援に関わった町民や土砂崩れが起きた地層について調査する専門家らが登壇し、震災を振り返るとともに、参加した約130人に今後への教訓を伝えた。
パネリストを務めたのは、町の吉田良行・防災担当理事兼総務課防災担当参事、「石狩思いやりの心届け隊」の熊谷雅之隊長、町社会福祉協議会の山野下誠事務局長、住民団体「つむぎ」の村上朋子代表。
発災直後、応急仮設住宅に入居する町民のケアなどを担当してきた吉田理事は「被災者にどれだけ寄り添えるかを考えてきた」と回顧。現在は「町民の防災減災の意識を高めていきたい」と話す。山野下事務局長は災害ボランティアセンターを運営するに当たり、「われわれだけでは不十分だったところを町から職員を派遣していただき、準備が一気に進んだ。生活支援員を通して寄せられた被災者の声を聞いていただいた」と支援に感謝し、今後は「地域での募金活動を通じて、全国で起きる次の被災への支援をしていきたい」と語った。
町内の農家支援に当たった熊谷隊長は「道内全体に目を向けていきたい。恩返しも大事だけれど、恩を送ることも必要」と展望。村上代表は「災害があっても力を発揮できる地域コミュニティー、平時から顔の見える関係づくりが大切」と強調した。
町と包括連携協定を結ぶ室蘭工業大学の木幡行宏副学長、同大の川村志麻教授は地震の土砂崩れについて、「地区によって崩れ方が違っている」と口をそろえ、吉野地区では木の倒れ方から「流下するスピードが速かったことが分かる」と解説。また木幡副学長は今回の震災から「過去の経験を上回ることが起きている」と指摘し、川村教授は「今後気候の変動によって災害がどう変わっていくか検討してく必要がある」と説いた。
このほか道開発局からは、幌内地区の日高幌内川などにおける災害復旧工事の進捗(しんちょく)状況や現在進める恒久対策の整備状況、道路や橋などの公共土木施設の復旧過程について説明があった。