職場の床や机の後ろにパソコンや充電器のコード類がたまるようになって何年になるか。足に引っ掛けた、間違って抜いた―という事故の頻度は高まるばかりだ。胆振東部のある町役場の日曜日。清掃の女性の探求心と実行力に、感心したことがある。出勤していた職員の机上のワープロから室外に延びていたコードを抜いた。突然画面が消えて職員が悲鳴を上げるとドアの外から冷静な女性の声。「この部屋のコードだったのかい―」
いろいろな職場で外国人が働く時代。雇用や待遇の問題はあるが、情報工学の最先端から建設や農漁業、介護の現場まで。そんな職場で働いている知人の話。もし誰かがコードを抜くような事故を起こすと、その瞬間に、それぞれの国や民族が背負った歴史や文化が見える気がするそうだ。中国の人は、なかなか非を認めない。韓国の人は本音を言ってくれない。インドの人は事実関係を確かめて必要と思えば謝る。将来をしっかり見通して働いているから余計なあつれきは避けたいようだ。みんな立派な留学歴を持つ優秀な技能者。でも、どこかが違う。
インドの人口が中国を抜いて世界一になる―と国連人口基金の発表。経済や戦争、平和の枠組みはどう変わるのか。どう備えたらいいのか。さてインド。(水)