刺されると強いかゆみに襲われるトコジラミの相談が後を絶たない。特に今夏は人の往来が活発になり、外出先から自宅に持ち込まれる被害の増加も懸念される。専門家は「不安な場合は早めに業者に相談を」と呼び掛けている。
トコジラミはカメムシの仲間で、体長5~8ミリほどになる。南京虫の別名もあり、茶褐色で夏によく卵を産み繁殖する。一番多くいるのは寝室で、家具の隙間や衣装ケース、畳の裏などに潜む。主に夜間、就寝中の人を刺して血を吸うが、何回か刺されるとアレルギー反応を引き起こし、強いかゆみに襲われる。
害虫駆除業者などでつくる日本ペストコントロール協会(東京都千代田区)によると、強力な殺虫剤の普及で1970年代には激減したが、2000年代になると世界で増え始めた。日本でも被害は増えており、協会への相談は21年度が598件で10年前の約3倍になった。現在のトコジラミには薬剤耐性がつき、市販の殺虫剤が効きにくいとされる。
トコジラミが増えた要因の一つが、往来の増加だ。人や物の世界的な行き来が近年活発になり、訪日外国人や海外旅行者らの荷物に入って持ち込まれたとされる。特に今夏は新型コロナウイルスが感染症法上の「5類」に移行してから初の夏となり、人の往来が活発化することで流入が増える恐れがある。
同協会技術委員の小松謙之氏は「今夏は国内外の旅行が増えると思うが、宿泊先では最初に部屋の隅や天井を見て、黒いふんや染みがないか確認してほしい。荷物をポリ袋で包むのも有効だ」と指摘。「自宅にトコジラミがいると思っても、駆除には手間や時間がかかることが多い。不安なら業者に早めに相談してほしい」と話している。