朝早く、カラスの鳴き声が聞こえる。カーカーと元気な声ではなくコロコロ、ゴロゴロと甘えるようにのどを鳴らしているのはきっと子ガラス。親に巣立ちへの不安でも相談しているのだろうか。
30年ほど前、越してきて初めての苫小牧の初夏。ハスカップの植えられた住宅街の空き地で子育て中のカミナリシギが夜遅くまでジュージューと鳴き交わす声を聞いた。遠くの山や湖に出掛けなくとも、身近な草地や樹上に生きるいろいろな野鳥の鳴き声を聞くことができるこの町の自然の豊かさが理解できた。「ジョッピンかけたか?」。そんな北海道弁丸出しのエゾセンニュウの声を何十年かぶりに聞いたのも、自宅から数分の所にあるスーパーの駐車場。イタドリなど背の高い野草がそのまま残った区画があり、そこが夏鳥として渡って来たエゾセンニュウの安全な潜入と子育ての場所。しかし大きな声に苦情でもあったのか野草が刈り払われ鳥も姿を消してしまった。
あれから何年たっただろう。夕方の散歩を始めた知人から「線路の近くのイタドリの茂みで鳴いている」との情報。ジョッピンは北海道方言辞典(北海道新聞社)によると錠、戸締まりのこと。エゾセンニュウはなまりを忘れず、暑さにも負けず、防犯を呼び掛けている。(水)