9月中旬を軸に岸田文雄首相が検討する内閣改造では、知名度の高い河野太郎デジタル相の処遇に注目が集まる。マイナンバー制度のトラブルに関する発言が集中砲火を浴びる一方、「ポスト岸田」の一角と目されるだけに、閣内にとどめ置いた方が来秋の自民党総裁選に向けて得策との見方もある。首相はこの夏、頭を悩ませそうだ。
「今、マイナンバーカードで国民に不安を与えていることを大変申し訳なく思っている」。首相は27日、福岡市内で開いたデジタル化関連の車座対話でこう前置きし、議論に移った。同席した河野氏からは謝罪の言葉は出なかった。
視察先で首相自ら陳謝せざるを得ないほど、マイナ問題で世論の風向きは厳しい。そうした中、来秋の「マイナ保険証」への一本化を主導したデジタル庁トップの河野氏は、マイナカード返納の動きを「微々たる数」と言い切るなど強気のスタイルを崩さない。
26日の参院特別委員会の閉会中審査では、個人情報保護委員会がデジ庁への立ち入り検査を実施した当日、河野氏が外国訪問中だったことを追及した立憲民主党議員に、「ひも付け(に関わった)機関からの回答を待っている時期だ。他の仕事をするのは当たり前だ」と反論。火に油を注ぐような答弁に、立民の泉健太代表は記者団に「任にあたわずだ」と述べ、辞任を要求した。
2月の国会審議では、故安倍晋三元首相の回顧録を元にした北方領土交渉などに関する質問に「所管外だ」を12回連発し、批判を浴びた。舌鋒(ぜっぽう)鋭い半面、受け身に回ると柔軟さを欠く部分がネックと言える。
自民内からは「交代すればマイナ問題の雰囲気は変わる」との声が上がる。所属する麻生派の領袖(りょうしゅう)である麻生太郎副総裁も「下働きで人の苦労を知るべきだ」と周囲に漏らす。
ただ、河野氏が目立つ分、マイナ問題で首相が直接やり玉に挙げられる場面が少ないことも事実。首相と距離を置く菅義偉前首相をはじめ、河野氏を「将来の首相候補」とみる向きも少なくなく、閣外で河野氏が自由に動き回れば、かえって首相の頭痛の種が増えることになりかねない。
「河野氏はよくやっている。人によって個性がある」。首相周辺はこう語り、河野氏へのフォローを怠らないでいる。