白老町にあるアイヌ文化の復興・創造の拠点、民族共生象徴空間(ウポポイ)が先ごろ開業3周年を迎えた。年間入場者数は、国が目標数を100万人としたこともあって折々に発表されてきた。
入場者が増えるほど、この文化への理解は広がる。その意味でウポポイが果たす役割に終わりはなく、各種体験プログラムや特別展は常に充実していかなければならない。実現には伝承者の育成が重要になり、先祖供養の呼び名が地方によって違うなど複雑な文化を正しく伝承していくには調査研究も大切。今後はこうした取り組みへの発表も期待したい。
アイヌ民族は北の大地の自然すべてを敬い、感謝する。小さな動植物にも命を見いだして愛し、そこから生まれた多様な知恵を暮らしに生かして生きてきた。人間も自然の一部に過ぎないという謙虚な考え方や姿勢は学ぶべきものだ。
そんな人々が、この国では歴史的に差別をされてきた。周りの言動に敏感にならざるを得ない日々は、民族が受けた不条理を胸に刻むことになったはず。それだけ多文化共生の道は険しいといえるが、ウポポイが役割を果たしていくことで、アイヌの人々とアイヌ文化を誇りに思う人々がつながって輪になり、未来に広がっていくことを願っている。(林)