私は成年後見人をしている。成年後見人は、預貯金などの財産を管理し、本人の希望、身体・生活の様子などを考慮して、必要な福祉サービスや医療が受けられるようサポートする。金銭管理も役目の一つであるため、本人の思いを第一に考えながら懐事情をみて管理を進めることになる。
自分の金銭を第三者が管理する想像はあまりできないが、例えば、私たちが一定の衣食住は整っている状況で、週に3000円自由に使って良いというルールの中で生活するとしたら、その3000円は何に使うだろうか。そもそも、週に3000円「しか」自由に使えないと思うか、3000円「も」自由に使えると思うか、人によって違うだろう。私ならば、好きなコーヒーや、すでに似た物を持っている文房具を買うと思う。理由はどちらも好きだからだ。
お金に関わる価値観は多種多様だ。医療や介護現場では、支援に際しいろいろな年代・立場の人と関わる。支援する上で、金銭に関わる話もされる。現場で支援している職員からは「正しいお金の使い方を教えている」「ろくなお金の使い方をしない」とさまざまな言葉を聞く。ひねくれ者の私は、この言葉を不思議に思う。例えば、たばこしか嗜好(しこう)品の無い人がたばこを買うのは正しくないお金の使い方なのか。すべてお菓子に使う人はろくなお金の使い方をしていないのか。だとすれば似たような文房具を買う私の使い方も正しくはないだろう。
そもそも正しいお金の使い方とは何なのかが私には分からない。正しさは、誰かの価値観で決まるのではなく、対話の中で本人が話す思いにあるのだろう。
(コミュニティナース・苫小牧)