岸田文雄首相が9月中旬を軸に検討する内閣改造・自民党役員人事は、茂木敏充幹事長を続投させるか否かが最大の焦点だ。茂木派から留任を求める声が上がる一方、党内には公明党との関係を悪化させたとの批判がくすぶる。茂木氏の処遇は、来年9月の党総裁選の構図を左右する可能性もあり、首相は熟慮の上で判断する構えだ。
「昨年は参院選に勝ち、(今年4月の)統一地方選もいい結果を残せた」。茂木氏は23日、根室管内中標津町で講演し、幹事長として陣頭指揮を取った一連の選挙結果に胸を張った。24日には釧路市で地域興しの関係者と意見交換し、首相肝煎りの「デジタル田園都市国家構想」をアピールした。
最近の茂木氏は精力的だ。16日に南米・欧州歴訪から帰国すると、翌17日に群馬県大泉町を訪問。21日の札幌市入りの2日後に北海道へ舞い戻り、24日までの日程をこなした。茂木派中堅は、茂木氏が党務に意欲的だと指摘。その上で「派閥として続投を求める」と強調した。
もっとも、党内には厳しい空気も漂う。公明党は5月、次期衆院選の候補者調整を巡る自民党の対応が誠実さを欠いたとして、東京での選挙協力解消を決定。背景には、茂木氏らが公明党の本気度を読み誤ったこともあるとされ、党幹部は「責めを負うべきは茂木氏だ」と言い切った。
報道各社の世論調査で内閣支持率が落ち込む中、内閣と党執行部の顔ぶれを刷新して政権浮揚を図るべきだとの意見も根強い。党関係者は「幹事長を代えなければ政権のイメージは変わらない」と指摘。党幹部も「支持率を好転させるには相当思い切った人事をしなければならない」と語った。
首相は頭を悩ませているようだ。目玉の少子化対策を先んじて打ち出されるなど、首相が茂木氏にお株を奪われてきたのは事実。ただ、政権を支える麻生太郎副総裁は、茂木氏の続投を希望しているとの見方がある。財務相などに横滑りさせた場合、麻生、茂木、岸田3派中心の主流派体制が動揺しかねない。
今秋の人事では、河野太郎デジタル相の扱いにも注目が集まる。茂木、河野両氏とも総裁選出馬に意欲的とされる中、2人を政権の要職にとどめるかどうかは、来年9月に党総裁任期満了を迎える首相の再選戦略に大きく影響するとみられる。
「続投と交代の二つの意見がある。どちらがいいのか」。茂木氏の処遇について、首相は最近、周辺に苦悩をにじませたという。