河井克行元法相(60)が公選法違反罪で実刑となった2019年参院選を巡る大型買収事件で、東京地検特捜部の検事が、元法相から現金を受け取った元広島市議に対する取り調べで、不起訴を示唆して現金が買収目的だったと認めさせたやりとりを録音したデータが存在することが21日、関係者への取材で分かった。
起訴されないとの期待を持たせ、検察側に有利な供述を引き出した利益誘導の疑いもある。最高検は録音データの存在を把握しており、調査に乗り出すとみられる。
現金を受け取ったとして起訴された広島県内の地元議員らの公判では、これまで少なくとも4人の被告が「認めれば不起訴にすると検察から示唆された」などと主張している。元市議は略式命令を不服として正式裁判を請求し、今後公判が開かれる予定。
刑事訴訟法では、任意に得られていない疑いがある自白は証拠にできないと定められている。
事件では、河井元法相が妻の案里元参院議員(49)=執行猶予付きの有罪確定=への投票や票の取りまとめなどを依頼し、地元議員ら100人に計約2870万円を提供したとして公選法違反罪に問われた。一審公判で元法相は当初、全面無罪を主張したが、被告人質問で一転して起訴内容の大半を認め謝罪。懲役3年の実刑とされ確定した。
特捜部は現金を受領した側も被買収の疑いで捜査し、全員を不起訴としたが、検察審査会の起訴相当議決を受け、9人を在宅起訴、25人を略式起訴した。