先日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターに、窓ガラスに衝突したゴジュウカラが保護されました。
ゴジュウカラは、スズメ目ゴジュウカラ科に属する小鳥で、一年を通じ、私たちの身近な環境で生息しています。これと似た名前でシジュウカラという種もいますが、こちらはシジュウカラ科に属するため、生物学的な分類では異なるグループとなります。
江戸時代三大俳人の小林一茶がこんな句を詠んでいます。
「むづかしや どれが四十雀(シジュウカラ) 五十雀(ゴジュウカラ)」
同じような環境で生息し、時には一緒に群れを成して行動することもあるため、双眼鏡等も発達していない時代では、この2種は同じ仲間で認識されていたのかもしれせん。しかし、よく観察すると、実は見た目もずいぶん異なります。
ゴジュウカラの特徴的な外見は、なんといっても背面の青みがかった灰色。そして、黒い過眼線(くちばしの付け根から目を横切って走る線)。また、北海道に生息するゴジュウカラは亜種シロハラゴジュウカラと言われ、本州の種と比べて腹部は真っ白で、背中の青灰色と腹部の白のツートーンが印象的です。
また、ゴジュウカラは、ほかの鳥がまねすることができない特技を持つことで知られています。それは木の幹を下向きに下りられることです。キツツキの仲間のように、木の幹を上手に登ることはもちろんですが、頭を地面に向けて下向きに移動ができるのは、唯一の種とも言われます。
その技を習得するべく進化したかのように、足の指にも特徴があります。それは体の支えに重要な役目を持つ足の第一趾(だいいっし)=人でいう足の親指=がほかの小鳥に比べて大きく、その爪も大きいことです。また握力も強く、同サイズの小鳥の足の力とは、比べものになりません。
今回保護されたゴジュウカラも、搬入時は動きが鈍かったものの、いざ症状が回復すると、私の手をめいっぱい握り、見事な足の力を見せてくれました。幸いにして、すぐにリリースすることができましたが、一見、私たちの目では発見しづらい細かな体のつくりにも、厳しい自然界を生き抜いてきた生きものたちの証しが詰まっていることに気付かされます。
当センターの剥製コーナーにもゴジュウカラの剥製を展示していますので、木下り名人の足にぜひ注目して、観察いただければと思います。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)