定年退職後の再雇用で、基本給などの大幅減額は違法として、名古屋自動車学校(名古屋市)の元社員が同社に定年前との差額分の支払いを求めた訴訟の上告審判決が日、最高裁第1小法廷であった。山口厚裁判長は、定年前の6割を下回るのは違法とした二審名古屋高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。
最高裁は非正規の待遇格差を巡り、2018年の判決で「賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきだ」とする枠組みを示した。基本給についての判断は初めてで、他の企業の賃金体系にも影響を与えそうだ。
小法廷は、正社員との不合理な労働条件格差を禁じた労働契約法(パートタイム労働法)に違反するかは、「基本給の性質や支給目的を踏まえて検討すべきだ」との初判断を示した。
その上で、正社員の基本給は勤続年数に応じた勤続給だけでなく、仕事内容や業績を反映した職務給、功績給の性質もあると指摘。再雇用の嘱託職員は役職への就任は想定されず、勤続年数に応じた増額もないことなどから、「正社員とは性質や支給目的が異なる」と述べた。
こうした点について二審は適切に考慮していないとして、審理をやり直すよう命じた。
一審名古屋地裁と二審によると、原告の男性2人は60歳まで同社で正社員として働き、定年後は嘱託職員として65歳になるまで勤務。業務内容や責任は変わらないまま、基本給は定年前の月額約16万~19万円の約4~5割に減った。
一、二審は、勤続年数が短い正社員をも下回っているとし、「定年退職時の6割を下回るのは違法」と判断。同社に差額分など計約625万円の支払いを命じていた。