認知症の12の危険因子のうち、3番目と4番目にご紹介するのは、高血圧と肥満です。12の因子を改善できれば、認知症の最大40%を予防したり遅らせたりできる可能性がありますが、このうち高血圧は2%、肥満は1%の効果があります。
高血圧は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で生じる、血管性認知症の発症に直結します。アルツハイマー型認知症のリスクも増します。
若いうちに高血圧が発症した場合だけでなく、中年期以降に発症した場合でも、認知症の危険因子になります。あらゆる年齢で、高血圧の治療は認知症予防につながるのです。
中年期は最大血圧130ミリHg以下を目指します。高血圧は塩分の取り過ぎや肥満が原因となりますので、まず食事の改善や適度な運動が効果的です。次に降圧剤による治療を行います。降圧剤は、現時点で認知症予防に有効な唯一の薬と言えるのです。
中年期の肥満は動脈硬化を進め、血管性認知症のリスクを5倍、アルツハイマー型認知症のリスクを3倍上昇させます。
肥満で脂肪組織が増えると、脂肪細胞に炎症が起き、血糖値を低下させるインスリンの効きが悪くなり、最終的に神経細胞の炎症を誘発して、認知症につながります。
肥満度を表す体格指数「ボディーマス指数(BMI)」は、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割ると計算できます。日本人の場合、BMIが25以上で肥満となります。
肥満に伴う高血圧、糖尿病、うつ病は認知症の危険因子ですし、近年認知症との関連が指摘されている睡眠時無呼吸症候群も引き起こします。
肥満に対する治療は、食事療法と運動療法が中心です。BMI35以上などの高度の肥満については、ホルモン異常や合併症が無いか調べるため、内科の受診をお勧めします。
(下畑享良・岐阜大教授、イラストはスギウラフミアキ)